今回から4回に分けて、建物の耐震性について、建物モデルにさまざまな条件設定をおこない、wallstatでのシミュレーションから「見えた」ことについて、検証をおこないます。
前回、「極めて稀な地震」の1.5倍の力に対して倒壊した、
上の建物モデルの奥側と両側面の窓面積を減らし、つまり窓下の小壁(こかべ)を増やして、再度同じ「極めて稀な地震」の1.5倍の力で揺らしてみると、
今度は倒壊を防ぐことができました。
このことから、木造軸組工法の耐震性能の向上には「壁の量(面積)が大きく関与している」と言えそうです。では、壁量を一定以上確保すればそれで必要充分、なのでしょうか?

先程の、倒壊を防いだモデルを上の画像のように、「壁の量は等しいまま、正面左側窓の位置をずらした」状態にして、同じく「極稀地震の1.5倍」で揺らします。すると、
倒壊してしまいました。そこで今度は、

それぞれの窓下の壁量を増やしてから、再度「極稀1.5倍」で揺らします。すると、
倒壊を防ぐことができました。
ここまでの、「壁量増加→倒壊を防ぐ→壁バランスがズレる→倒壊→さらに壁量増加→倒壊を防ぐ・・」
といった、対策と結果の繰り返しから「見えた」ことは、以下のようにまとめるができそうです。
まとめ1:
柱・梁・土台などで構成される壁(=耐力壁)と、窓上・窓下などの小壁(≒準耐力壁)を併せた「壁の総量」は、その建物の耐震性向上に大きく関与しています。
まとめ2:
壁の量と壁の配置バランスは、例えば、壁バランスの不均衡を、壁量を増やすことで補ったり、逆に、バランスの良い壁の配置のおかげで、必要とされる相対的な壁量を減らすことができるなど、お互いが補完しあう関係にあります。
まとめ3:
また、今回のモデル作成とシミュレーションを通して実感したことを一言添えると、壁量と壁バランスの「どちらかを優先しなければいけない」場合は、まずは壁量の確保を優先しておくことで、それ以降の作業をスムーズに運ぶことができるようです。
まとめ4:
計画初期段階の平面・断面計画の「匙加減」は、建物の耐震性能を考えるうえで、大変重要です。
次回は、屋根・天井面(いわゆる「水平構面」)の強さに応じて、建物の耐震性能がどのように変化してゆくのか、検証します。
追記:
ここで「極めて稀な地震」「稀な地震」の概要について、補足説明をさせてください。
「極めて稀な地震」とは、建築基準法等で定められた、「数百年に一度程度発生する」と想定された地震の力で、「大地震」とも呼ばれます。具体的には、建物重量の100%の水平力(=建物を、縦方向に90度回転させた状態を保ったときに、建物に加わる重力)です。震度6強、地動加速度300~400gal程度が、おおよその目安とされています。この地震の力によって「倒壊しない」性能が、建築基準法により求められています。
「稀な地震」とは、「数十年に一度程度発生する」想定の、建物重量の20%の水平力で、震度5強、地動加速度80~100gal程度が、おおよその目安です。この地震の力によって「損傷しない」性能が、(上の「倒壊しない」性能に併せて)建築基準法により求められています。
