2-5:「夏涼しくて冬あたたかい家」(5/6)

「ほどほどに快適」な室内環境をつくるための、夏の「肝」は、一言で言えば「熱を逃がす」ことでしたが、冬はその逆で、室内の熱を「逃がさない」ことが、冬の室内環境を整えるための、最優先事項です。

けれど夏に、どんなに防いでも熱が室内に侵入してきたように、冬も、外に逃げようとする熱のすべてを室内に留めることはできません。

その様子をよく観察すると、熱には、3つの「逃げ道」が用意されていることがわかります。

熱の3つの逃げ道とは、

1:屋根と外壁(床下)
2:窓ガラス
3:換気

です。つまり、建物全体から逃げてゆく熱量は、

1から逃げてゆく熱の量
2   〃
3   〃

の総量になります。

「逃げてゆく熱の総量」と
「室内で作られる熱の総量」


が同じならば、室温は一定を保ち、

「逃げる熱」の量が勝れば、室温は下がり、
「室内で作られる熱」の量が勝れば、室温は上がります。

たとえば、

外気温5℃
室内温度20℃、で一定とした場合に、

建物全体(逃げ道1+2+3)つまり、

1:屋根と外壁(床下)
2:窓ガラス
3:換気

から「1時間当たり100」の熱が外に逃げてゆくとします。

そのときにストーブでもエアコンでもよいのですが、逃げてゆくのと同じだけの熱、「1時間あたり100」の熱を室内でつくりだしてやれば、室内は20℃に保たれます。

かなりざっくりした話ですが、これが室内温熱環境を検討する際の基本的な考え方で、このときの逃げる熱の量の度合いは、ほぼそのままその家の断熱性能となり、一般的にその性能値は、

性能値=逃げる熱の度合い ÷ その家の外皮(屋根・外壁・窓等の総面積)

で、あらわすことができます(いわゆるUA値とよばれるものです)。

断熱材の性能とは、おおづかみに言うと、その「素材自体」の密度です。同密度では厚みが厚いほど熱を「通せんぼ」できる割合が大きく、つまり高性能です。

断熱材について、布団状のものを壁のなかに入れたり、発泡スチロールのような板を外壁の下地に貼り付けたりする事例や、いろいろな商品の広告やCMを御覧になったこともあるかもしれませんが、こまかな空気層を多数重ねて熱を伝わりにくくする原理はどれも同じです。

工法を含めた断熱材選定について、諸説入り乱れてネット掲示板などでは「けっこうすごい状態」が続いていたりもしました。が、基本的な向き合い方は「スーパーマーケットで市販のカレールウを選ぶとき」と同じで問題ありません。その製品に定められた施工をおこなえば必ず設計した性能値は出ます。ですから施工精度(平面計画の練度が、その担保となります)とコストをバランス取りしながら、お好みで材料選定をおこなえば、それで大丈夫です。

計画の初期段階では、これまでの経験から「ガラス窓が熱を通す量は、おおよそ断熱材を入れた外壁の10倍」、「外壁+屋根面の10%程度がガラス窓の面積」つまり「外壁屋根面から逃げる熱量と同じくらい(10%の面積×10倍)の熱が、窓ガラスから逃げている勘定」を基準値として、基本設計を進めることが多いのですが、このことは同時に、ガラスをふくめたサッシ部分の仕様・面積を含めた検討は、イメージ以上に断熱計画には有効で重要である、ということを表しているのだとも思います。

過去に設計した事例を紹介します。

断熱等級4程度の仕様、述べ床面積40坪の住宅の、それぞれに熱が「逃げる」割合は、

計算すると、

1:屋根・外壁 40%
2:ガラス窓  40%    1+2+3=100%
3:換気    20%

と、なりました。暖房の熱源はペレットストーブ1台にてまかなう設計です。2024年で、完成から17回目の冬を迎えていますが、これまで快適に過ごしていただいています。

実は、快適な室内環境には、ここまでお話した熱量計算のほかに、あとふたつの「隠し味」が必要です。

やや長くなりそうなので、次回に続きます。

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